富田の石取祭とは

富田の石取祭(とみだのいしどりまつり)は、三重県四日市市富田地区で毎年夏に行われる祭りです。「石取祭」は、北勢地方(三重県北部)に広く伝わる祭礼で、太鼓と鉦(かね)を激しく打ち鳴らす「祭車(さいしゃ)」が町を練り歩く、勇壮かつ賑やかな夏祭りとして知られています。「日本一やかましい祭り」とも称される桑名の石取祭で名高い石取祭の系統に連なる、富田地区ならではの夏の風物詩です。

歴史と由来

石取祭は、もともと神社の祭りに用いる清浄な石を川から取ってくる神事「石取り」に由来するとされます。北勢地方では、この石取りの行事が、太鼓と鉦を打ち鳴らしながら祭車を曳く賑やかな祭りへと発展しました。富田の石取祭も、この地域の信仰と伝統を受け継ぎ、町衆の手によって守られてきた祭礼です。各町が誇る祭車は、精緻な彫刻や金具で飾られた豪華なもので、地域の人々の心意気を今に伝えています。

見どころ

最大の見どころは、太鼓と鉦を力いっぱい打ち鳴らしながら、祭車が町を練り歩く勇壮な光景です。「ゴンチキチキ」と響く鉦の音と、腹に響く太鼓の音が一体となった迫力ある演奏は、石取祭ならではの醍醐味。提灯で美しく飾られた祭車が夜の町を進む様は幻想的で、囃子方の熱気と相まって祭りを盛り上げます。豪華に飾られた祭車そのものの美しさも見どころのひとつ。北勢の夏を彩る、賑やかで活気あふれる祭りを体感できます。

開催情報

例年夏(8月)に、三重県四日市市富田地区で開催されます。夏祭りであり、季節は夏。祭車の運行は夜間が中心です。日程やルートの詳細は年によって異なるため、四日市市および地元の主催団体の公式発表で事前に確認することをおすすめします。

アクセス

会場の富田地区へは、JR関西本線「富田駅」や近鉄名古屋線「近鉄富田駅」からアクセスできます。四日市市の北部に位置し、名古屋方面からJRや近鉄を利用してアクセスできます。期間中は周辺で交通規制や混雑が予想されるため、公共交通機関の利用がおすすめです。

周辺観光

四日市市は、三重県北部の中核都市で、工場夜景や伊勢湾の海の幸が楽しめます。同じ富田地区では、ユネスコ無形文化遺産にも登録された「富田の鯨船行事」も行われており、ただし鯨船行事は令和7年度から9月23日以降の土・日曜日の開催となり、石取祭とは時期が異なります。近隣の桑名市では、石取祭の本場として名高い「桑名石取祭」が開催されるほか、なばなの里や長島温泉などの観光地も。北勢地方の祭り文化と観光を満喫できるエリアです。

会場・アクセス詳細

  • 会場:鳥出神社(三重県四日市市富田二丁目16-4)および富田西町・北村町・茂福町の各町
  • アクセス:近鉄名古屋線富田駅から徒歩約8分、JR関西本線富田駅から徒歩約8分
  • 開催時期:毎年8月14日に各町の町練り、8月15日に鳥出神社を中心とした三町合同の祭り
  • 料金:沿道からの見学は無料です。有料観覧席の設定は案内されていません。
  • 問い合わせ:四日市市シティプロモーション部文化課 電話059-354-8238

祭車の巡行は夜間が中心で、細かな時刻や巡行路は年によって変わります。見物の際は富田地区や四日市市の告知で最新の日程を確認してください。近鉄富田駅前や東海道沿い、中央通りは祭車が通る区間にあたるため、人出が多くなります。

三台の祭車と三つの町

富田の石取祭を担うのは、富田西町、北村町、茂福町の三つの町です。三台の祭車はいずれも桑名から譲り受けたもので、来歴も意匠も町ごとに異なります。富田西町の祭車は江戸時代末の1847年から1859年ごろに作られたと伝えられ、大正11年に桑名の旧東舩馬町から譲り受けました。水引幕と胴幕を備えた形式で、天幕には鳳凰が描かれ、囃子は五っ拍子を用います。富田のなかで最も古くから石取祭を行ってきた町とされています。北村町の祭車は文政年間の制作で、大正10年に桑名の赤須賀から購入されました。長くケヤキの白木のままでしたが、令和4年7月に漆塗りが完成し、亀腹には地元を流れる十四川の桜が蒔絵で描かれています。天幕は麒麟、囃子は七っ拍子で、太鼓は胴回りが2尺8寸、およそ84センチと富田で最も大きなものです。茂福町の祭車は文政9年、西暦1826年の制作で、部材に「野々垣」の墨書が残ります。明治32年に桑名の三崎通西之組から赤須賀一番組へ渡り、大正12年に茂福へ来ました。一重台輪の亀腹型で、天幕は唐獅子牡丹、囃子は七っ拍子です。四日市市の文化財解説も、茂福の祭車を古い形式を残すものとして挙げています。

町ごとに異なる囃子

石取祭の囃子は町ごとに違い、富田でも聞き分けることができます。北村町と茂福町は七っ拍子、富田西町は五っ拍子です。北村町と茂福町の拍子はよく似ていますが、茂福のほうが拍子の長さがわずかに長いといわれます。鉦の甲高い音と太鼓の低い響きが重なり、複数の祭車が近づくとそれぞれの拍子がぶつかり合って、日本一やかましいと形容される音の厚みが生まれます。祭車の上部の山形には提灯が並び、茂福町の提灯は表に朱で「茂」、裏に黒で「御神燈」と記されています。この音を四日市市は「ゴンチキチキ」、富田地区では「チキチキ・ゴンゴン」と書き表しています。

文化財としての位置づけと由来

富田の石取祭は、北村石取祭、茂福石取祭、富田西町石取祭を合わせた名称で、平成23年1月13日に四日市市の無形民俗文化財に指定されました。保持者は若宮八幡神社北村石取り祭車保存会、茂福石取祭車保存会、富田西町連合自治会の三団体です。四日市市の文化財解説は、この祭りについて、虫送りなどの伝統的な農村行事に石取祭車が加わり、桑名の石取祭の影響を受けて発展したと考えられると説明しています。石を採って神社に納める神事そのものは桑名の祭りに由来するもので、富田では祭車と囃子を受け入れ、盆の行事と結び付けた点に特色があります。町ぐるみで担われる、地域に根ざした民俗行事です。

同じ時期の近隣の祭り

鳥出神社の祭礼としてはもう一つ、国の重要無形民俗文化財である鯨船行事が知られています。平成28年12月に「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録された行事ですが、四日市市の案内によると令和7年度からは毎年9月23日以降の土曜日と日曜日に行われることになり、8月の石取祭とは開催時期が分かれています。一方、8月14日と15日には、近隣の富田一色町で飛鳥神社のけんか祭りが、天ヶ須賀では住吉神社の石取祭りも行われます。いずれも盆に祭りを営む北勢の海沿いの町の習わしによるものです。石取祭の本場である桑名市の石取祭は8月第1日曜日を本楽、前日を試楽として営まれ、平成19年3月に国の重要無形民俗文化財に指定されていますが、富田の石取祭とは別の祭りです。日程と場所を確かめたうえで訪ねてください。


出典・関連リンク

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