概要

島立裸まつり(しまだちはだかまつり)は、長野県松本市島立の堀米(ほりごめ)地区に江戸時代から伝わる神事で、正式には「島立堀米の裸祭り」と呼ばれる。堀米地区の氏神である津島社(つしましゃ)の夏祭りとして、例年7月に行われる。男児たちが晒木綿(さらしもめん)のもっこ褌(ふんどし)姿になり、紙幟(かみのぼり)を持って掛け声をかけながら練り歩き、厄除けや疫病退散などを祈願する素朴な祭りである。子どもたちが主役となる伝統行事として大切に受け継がれ、1988年(昭和63年)に長野県の無形民俗文化財に指定されている。

歴史・由来

島立堀米の裸祭りは、堀米地区の氏神である津島社の祭りとして伝えられてきた。津島社は、江戸時代中期に尾張国(現在の愛知県)一宮の津島神社から勧請(かんじょう)されたといわれる社で、津島神社は古くから牛頭天王(ごずてんのう)を祀り、疫病除け・厄除けの信仰で知られる。夏場に流行しやすい疫病を鎮め、無病息災を願う津島信仰が、この地に根づいて祭りとなったものである。

裸まつりという形式は、心身を清めた裸の姿で神事に臨むことで、より篤い祈りを捧げるという考えに基づくものとされる。とりわけこの祭りでは男児が主役を担い、子どもたちが褌姿で紙幟を掲げて練り歩く。都市化が進む松本市域にあって、堀米地区では史跡や民俗行事が数多く守り伝えられており、この裸祭りもその一つとして、地域の人々の手で大切に継承されてきた。かつては子どもたちだけの素朴な祭りであったが、その文化的価値が認められ、1988年に長野県の無形民俗文化財に指定されたことで、地域を超えて知られる存在となった。

津島社の本社にあたる尾張の津島神社は、全国に約三千社あるとされる津島・天王信仰の総本社で、夏に行われる天王祭は日本三大川祭の一つに数えられる。その分社として勧請された堀米の津島社で、子どもたちが疫病退散を祈る裸祭りが営まれてきたことは、牛頭天王を祀る天王信仰が農村の暮らしの中にまで深く根づいていたことを物語る。夏の疫病が人々にとって大きな脅威であった時代の切実な祈りが、子どもの神事という形で今に伝えられているのである。

見どころ

最大の見どころは、晒木綿のもっこ褌姿になった男児たちが、紙幟を手に掛け声をかけながら練り歩く姿である。あどけない子どもたちが、伝統の装束に身を包んで真剣に神事に臨む様子は、見る者の心を打つ。夏の日差しのなか、白い褌と紙幟が連なって進む光景は、江戸時代から続く民俗行事ならではの素朴さと力強さにあふれている。

また、この祭りでは泥池での禊(みそぎ)が行われることでも知られる。子どもたちが泥にまみれながら身を清める場面は、厄を落とし清浄を取り戻すという神事の意味を体現するものであり、迫力と神聖さを兼ね備えた光景として印象に残る。掛け声とともに進む行列、泥にまみれる禊、紙幟の連なりといった、現代では珍しくなった伝統的な所作の数々が、この祭りの大きな見どころとなっている。

開催情報・アクセス

島立堀米の裸祭りは、例年7月初旬(資料により7月1日、または7月7日頃)に、松本市島立堀米地区の津島社を中心に行われる夏祭りである。地域の氏神の祭りとして、地元の子どもたちを中心に営まれる。

アクセスは、JR篠ノ井線・大糸線などが乗り入れる松本駅が玄関口となる。島立地区は松本市の市街地西部に位置し、松本駅から路線バスや車で向かうことができる。松本空港(信州まつもと空港)にも近いエリアである。地域に根ざした神事であるため、見学の際は祭りの妨げにならないよう配慮し、地元の方々への礼を忘れないことが大切である。正確な開催日や時間は年によって異なる場合があるため、松本市や地元の観光関連の公式発表で事前に確認するとよい。

周辺の見どころ

松本市は、国宝・松本城を擁する長野県中部の中心都市である。黒と白のコントラストが美しい松本城の天守は現存十二天守の一つで、北アルプスを背景にした姿は松本のシンボルとなっている。城下町の風情を残す中町通りやなわて通りには、蔵造りの建物や趣ある店が並び、街歩きが楽しい。

島立地区のある松本市西部から足をのばせば、北アルプスの玄関口・上高地や、温泉地として名高い浅間温泉・美ヶ原温泉なども近い。雄大な山岳景観と温泉、そして城下町の文化が一度に楽しめるのが松本の魅力である。また松本は、世界的に知られる音楽祭が開かれる文化都市でもあり、伝統行事から現代の芸術まで、幅広い顔を持つ土地である。祭りとあわせて、信州・松本の自然と歴史を満喫できる。

男児が主役を務める点もこの祭りの大切な特色である。次代を担う子どもたちが地域の神事の中心となることで、祭りの担い手が自然に世代から世代へと受け継がれていく。少子化や都市化により各地で子ども主体の民俗行事が存続の岐路に立つなか、堀米地区が県の無形民俗文化財に指定されたこの祭りを守り続けていることは、地域社会の結びつきの強さと、伝統を次世代へ渡そうとする人々の意志のあらわれといえる。素朴ながらも信仰の核心を今に伝える行事として、その価値は年を追うごとに高まっている。

関連情報

島立堀米の裸祭りの最新情報は、松本市や地元の観光関連の公式発表で確認できる。本祭りは長野県の無形民俗文化財に指定されており、江戸時代から続く津島信仰に根ざした子どもたちの神事として、学術的にも文化的にも貴重な行事である。全国各地には、無病息災や厄除けを願う裸祭りが数多く伝わるが、男児が主役となり、紙幟を掲げ泥池での禊を伴うという形式は、この祭り独自の特色である。都市化が進むなかで素朴な民俗行事を守り伝える堀米地区の取り組みは、地域の伝統文化を次世代へつなぐ営みとして、今後も大切に受け継がれていくことが期待される。


出典・関連リンク

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