概要

西馬音内の盆踊(にしもないのぼんおどり)は、秋田県雄勝郡羽後町の西馬音内地区に伝わる盆踊りで、毎年8月16日から18日までの3日間にわたって行われます。徳島県の阿波踊り、岐阜県の郡上おどりと並んで日本三大盆踊りの一つに数えられ、東北を代表する夏の行事として知られています。

最大の特徴は、編み笠や彦三頭巾で顔を隠した踊り手たちが、あでやかな衣装をまとって篝火のもとで舞う幻想的な光景です。にぎやかで陽気な盆踊りが多いなかで、西馬音内の盆踊は物憂げで優雅な所作と、顔を隠した踊り手の姿が独特の情緒をたたえており、その芸術性の高さが広く評価されています。祖霊を送る盆の行事としての性格を持ち、篝火に浮かび上がる踊りの列は、見る者を静かな感動へと誘います。

歴史・由来

西馬音内の盆踊の起源を記録した確かな資料は残されていませんが、言い伝えによれば、その最も古い起源は鎌倉時代までさかのぼるとされ、およそ700年の歴史を持つと伝えられています。もともとは地域の住民が祖霊を供養し、送り出すための盆の行事として受け継がれてきました。

長く地元の人々によって守られてきたこの盆踊りは、昭和10(1935)年に東京で初めて公演されたことをきっかけに、踊りの形式が整えられていきました。それ以前の明治40(1907)年には、この地を訪れていた俳人の河東碧梧桐が盆踊りの姿を書き留めており、地元の外からもその情緒が早くから注目されていたことがうかがえます。東京公演によって西馬音内の盆踊は広く世に知られるようになり、その独特の美しさが全国的な注目を集めるようになりました。

そして昭和56(1981)年1月21日、高い芸術性を有する文化として、盆踊りとしては全国で初めて国の重要無形民俗文化財に指定されました。これは西馬音内の盆踊が単なる地域の行事にとどまらず、日本の民俗文化を代表する存在として認められたことを意味します。

さらに2022年11月には、各地の盆踊りや念仏踊りなどをまとめた「風流踊」の一つとして、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。地域の人々の手によって世代を超えて受け継がれてきた伝統が、今や世界的にも価値を認められる文化となっています。

見どころ

顔を隠した踊り手の姿 踊り手は編み笠を目深にかぶるか、あるいは「彦三頭巾(ひこさずきん)」と呼ばれる黒い頭巾で顔を覆って踊ります。彦三頭巾は目元に穴の開いた袋状の覆面で、農作業用の日除け・虫除けの黒布から生まれたとも、歌舞伎の黒子から着想を得たともいわれています。顔を隠すことで生まれる匿名性と神秘性が、この盆踊り独特の情緒を生み出しています。

あでやかな端縫い衣装 衣装には二つの種類があります。一つは「端縫い(はぬい)衣装」で、さまざまな絹布をつづり合わせて作られた華やかな衣装です。もう一つは「藍染め浴衣」で、こちらは彦三頭巾と組み合わせて着られます。編み笠をかぶるのは主に端縫い衣装の踊り手で、衣装と頭巾の組み合わせにも約束事があります。

篝火に浮かぶ幻想的な光景 夜、通りに焚かれた篝火の灯りのなかを、優雅に舞う踊り手の列が進みます。あでやかな衣装と顔を隠した姿が炎に照らし出される光景は、ほかの盆踊りにはない幻想的な美しさを持ち、この祭りの最大の魅力となっています。にぎやかに騒ぐのではなく、静かに、そして流れるように舞う所作には、祖霊を送るという盆本来の祈りの心が息づいており、見る者は華やかさのなかにどこか物悲しい情緒を感じ取ります。

独特のお囃子 踊りを支えるお囃子には、「寄せ太鼓」「音頭」「がんけ」などがあり、太鼓や笛、三味線などの音色が踊りに彩りを添えます。物憂げな旋律が、優雅な踊りとあいまって独特の世界をつくり出します。

開催情報・アクセス

開催期間 毎年8月16日から18日までの3日間。

会場 秋田県雄勝郡羽後町の西馬音内地区(本町通りなど)。

位置づけ 日本三大盆踊りの一つ(阿波踊り・郡上おどり・西馬音内盆踊り)。国の重要無形民俗文化財(1981年指定)、ユネスコ無形文化遺産「風流踊」(2022年登録)。

保護団体 西馬音内盆踊保存会。

アクセス 会場の羽後町へは、秋田県南部の湯沢市方面からのアクセスが便利です。開催期間中は多くの来訪者でにぎわうため、公共交通機関や臨時の交通案内を利用するとよいでしょう。

周辺情報

西馬音内の盆踊が行われる羽後町は、秋田県の南部、雄勝郡に位置する町で、周囲を山々に囲まれ、豊かな自然と田園の農村風景が広がる地域です。西馬音内地区は古くからの町並みが残り、盆踊りの舞台となる通りには、祭りの季節になると独特の情緒が漂います。

町内には、西馬音内の盆踊の歴史や衣装、道具などを紹介する施設もあり、祭りの時期以外でもその文化に触れることができます。あでやかな端縫い衣装や彦三頭巾の実物を間近に見ることで、盆踊りの奥深さをより深く知ることができるでしょう。

また、羽後町を含む秋田県南部一帯は、湯沢や横手といった歴史ある町が点在する地域でもあります。西馬音内の盆踊を訪れる際には、周辺の温泉や史跡、郷土料理などとあわせて、秋田の豊かな風土を味わう旅を楽しむことができます。

関連情報

  • 名称:西馬音内の盆踊(にしもないのぼんおどり)
  • 開催地:秋田県雄勝郡羽後町・西馬音内地区
  • 開催期間:毎年8月16日〜18日
  • 起源:言い伝えでは鎌倉時代(約700年前)
  • 文化財:国の重要無形民俗文化財(1981年・盆踊りとして全国初)
  • 世界遺産:ユネスコ無形文化遺産「風流踊」(2022年登録)
  • 位置づけ:日本三大盆踊りの一つ(阿波踊り・郡上おどり・西馬音内盆踊り)

出典・関連リンク

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