概要

「なら燈花会」は、奈良県奈良市の奈良公園一帯で例年8月上旬の約10日間(近年は8月5日から8月14日まで)開催されるろうそくの灯りによるイベントです。点灯時間は午後7時から午後9時30分までで、奈良公園浮雲園地、浅茅ケ原、浮見堂、興福寺、猿沢池と五十二段、奈良国立博物館前、奈良春日野国際フォーラム甍(いらか)、東大寺鏡池周辺(8月13日・14日のみ)、春日大社参道(8月14日のみ)の9会場で実施されます。例年8月上旬の約10日間開催され、入場は無料です(「一客一燈」体験など一部有料)。

このイベントは、NPO法人「なら燈花会の会」が主体となり、全員がボランティアで運営されている点が最大の特徴です。NPO法人なら燈花会の会会員は約250人程度で、ユニフォームは赤いTシャツであり、一年を通じて企画運営に携わっています。会期中のカップ並べや点灯、後片付けなどを行う「灯人(ひと)サポーター」は一日当たり300人程度を上限として毎年6月より募集され、会員と灯人サポーターを合わせると一日当たり約400人、延べ約4,000人のボランティアで運営されています。この手づくりの温かみが、商業イベントにはない独特の魅力を生み出しています。

歴史・由来

「なら燈花会」は、古くから続く伝統行事ではなく、1999年に始まった比較的新しいイベントです。かつて観光客が少なくなる夏の奈良を盛り上げようと、奈良商工会議所青年部などの団体が中心となり、「奈良らしい祭り」を創出しようという想いから企画されました。1300年前に都として栄えた奈良には広大な自然の中に古代日本のおもかげが残っており、その地にふさわしい、どこか懐かしさを感じさせるろうそくのやさしい灯りがコンセプトとして選ばれました。

2000年には第2回「なら燈花会」が実施され、同時に「なら燈花会の会」が創設されました。同年には「冬の燈花会」として「21世紀COUNTDOWN in NARA」も開催され、活動の幅を広げています。2003年頃には、使用するろうそくを自然環境に優しいパーム油脂を使用したものに変更し、万が一鹿が口にしても安全な天然由来素材へと転換しました。この変更により、煤がほとんど出なくなり、カップの清掃作業回数も削減され、ろうそくの形状も燈花会のロゴをモチーフにしたものとなりました。

2006年には奈良県と共に「あかりサミット」を発足させ、2008年の第10回記念では手塚プロダクションとコラボレーションし「火の鳥」を描く企画を実施しました。2010年には第4回全国あかりサミットを奈良で開催し、熊本水灯りなど他地域への燈花会の展開も行っています。2018年には開催20周年を迎え、記念式典や20周年ロゴ・記念品制作、出張燈花会などが行われました。

2020年は新型コロナウイルス感染対策のため無観客開催となり、ニコニコ動画やYouTubeにてライブ配信が行われました。この年は春日大社、東大寺、興福寺にて「祈」の文字をカップでつくりコロナ終息祈願を実施しています。2021年も事前登録制を予定しながらも無観客開催となりましたが、2022年には3年ぶりに有観客での開催が実現し、浮雲園地・浮見堂・興福寺・猿沢池と五十二段・浅茅ヶ原・東大寺鏡池・春日大社参道の7会場が実施されました。

2023年は第25回記念としてオープニングの火入れ式をJR奈良駅前広場で開催し、生駒「高山竹あかり」のオブジェを展示しましたが、最終日が台風7号の接近により中止となりました。2024年は「燈cafe」を再開し、春日野園地会場を除く9つの会場で開催され、東京の奈良まほろば館移転リニューアル3周年フェアでも燈花会が開催されています。主催者の願いは、この灯火が「100年続く奈良の宝物」になることです。

見どころ

浮雲園地会場の一客一燈体験 浮雲園地・浮島では、来場者が好きな場所にろうそくのカップを置き灯すことができる「一客一燈」の体験が実施されています。受付時間は午後7時から午後9時までで、参加費は千円(カップ2個)であり、自身で灯したキャンドルが幻想的な景観の一部となる体験ができます。この体験は、ただ鑑賞するだけでなく、来場者自身が燈花会の一部となれる特別な機会を提供しています。

東大寺鏡池会場(8月13日・14日のみ) 東大寺の鏡池周辺は、8月13日と14日のみ開設される期間限定の会場です。奈良の大仏で知られる東大寺の荘厳な建築と水面に映るろうそくの灯りが調和し、息をのむような美しさを創り出します。国宝級の建造物を背景にした灯りの演出は、古都奈良の歴史と自然が融合した唯一無二の景観を提供しています。

春日大社参道会場(8月14日のみ) 8月14日の一夜限り、春日大社の参道が燈花会の会場となります。この日は春日大社で古くから伝わる神事「中元万燈籠(ちゅうげんまんとうろう)」が斎行される日であり、境内に吊された約3000基もの石燈籠や釣燈籠すべてに火が灯されます。二つの灯りの祭典が融合するこの夜は、神聖な空気に満ちあふれた圧巻の光景が広がり、燈花会最大の見どころの一つとなっています。

興福寺会場の国宝建築と灯り 興福寺会場では、国宝の五重塔や三重塔を背景にろうそくの灯りが配置されます。猿沢池と五十二段の会場と隣接しており、池の水面に映る灯りと塔のシルエットが幻想的な景色を創り出します。奈良公園の中心部に位置する興福寺は、多くの来場者が行き交う人気スポットであり、夜の古都情緒を最も感じられる場所の一つです。

甍(いらか)会場のほの灯りライブ 奈良春日野国際フォーラム甍では、「一客一燈」の実施に加え、7日と8日には「ほの灯(あか)りライブ」が開催されます。通常は静かな灯りを楽しむのが主である燈花会において、音楽と灯りが融合する特別な演出を提供しています。このライブは、ろうそくの灯りだけが照らす空間で行われるため、日常とは異なる非日常的な体験となります。

ボランティアによる手づくりの絶景 數万本ものろうそくへの点火や後片付けは、すべてボランティアスタッフの手で行われています。会員と灯人サポーター合わせて一日当たり約400人が運営に関わり、その温かみが「手づくりの絶景」と呼ばれる所以です。この取り組みにより、単なる観光イベントを超えた地域住民と来場者の一体感が生まれ、会期中には90万人以上が訪れる人気イベントへと成長しました。

灯りの素材へのこだわり 使用されるろうそくは、2003年頃からパーム油脂を使用した天然由来素材に変更されており、万が一鹿が口にしても安全な設計となっています。煤がほとんど出ないため、カップの清掃作業回数も削減され、環境への配慮と美しい灯りを両立させています。2005年からはカラーカップも使用し、色によるデザイン化も図られており、毎年異なる色彩の演出が楽しめます。

開催情報・アクセス

  1. 開催期間: 例年8月上旬の約10日間(近年は8月5日~8月14日)。最新の日程は公式サイトで確認。ただし、会場により開催日時が異なり、東大寺鏡池会場は8月13日・14日のみ、春日大社参道会場は8月14日のみの開催です。

  2. 点灯時間: 午後7時から午後9時30分まで。各会場で一斉に点灯が行われますが、天候により点灯時間が変更となる場合があります。

  3. 入場料: 無料。ただし、甍会場で実施される「一客一燈」体験は参加費千円(カップ2個)が必要です。一部の寺院では夜間拝観が有料となる場合があります。

  4. アクセス: JR奈良駅または近鉄奈良駅から奈良交通バス(市内循環外回り)「東大寺大仏殿・春日大社前」下車、徒歩約5分。奈良公園一帯が会場のため、駅から徒歩での移動も可能ですが、開催期間中は混雑が予想されるため公共交通機関の利用が推奨されています。

  5. 交通規制: 期間中は奈良公園周辺で交通規制が実施されます。三条通り(上三条交差点~興福寺南)は8月5日~14日、午後5時30分から午後10時まで一般車両通行止め。猿沢池北側道路は同様に8月5日~14日、午後5時から午後10時まで規制されます。県庁東交差点~大仏殿前~春日大社は8月13日~15日、午後6時から午後9時30分までバス・タクシー・許可車両を除き通行止めとなります。

  6. 天候による中止: 少雨決行ですが、荒天や強風の場合は中止となる可能性があります。小雨の場合は開催されますが、雨の度合いによってろうそくが消えることもあります。開催の有無の問い合わせはナビダイヤル0570(026)105まで。最新情報は公式サイト(http://www.toukae.jp/)で確認が必要です。

周辺情報

なら燈花会の会場となる奈良公園一帯は、世界遺産に登録された寺院や神社が点在するエリアです。東大寺は奈良の大仏で世界的に有名であり、夜間の燈花会期間中は鏡池に映る灯りと大仏殿の荘厳な姿が調和します。興福寺の五重塔は日本で2番目に高い古塔であり、猿沢池の水面に映る姿と燈花会の灯りが織りなす景色は、奈良を代表する夜の風景の一つです。春日大社は約3000基もの石燈籠と釣燈籠が立ち並び、特に8月14日の中元万燈籠の日には、燈花会のろうそくの灯りと神社の燈籠の灯りが融合する神聖な空間が創り出されます。

奈良公園内には、鹿せんべいで知られる奈良のシカが多数生息しており、訪れる観光客に親しまれています。燈花会の会場では、使用されるろうそくが万が一鹿が口にしても安全な天然由来素材であるなど、生態系への配慮がなされています。また、周辺には奈良国立博物館や奈良春日野国際フォーラム甍などの文化施設もあり、昼間の観光と夜の燈花会を組み合わせた一日中の奈良観光が可能です。浮雲園地や浅茅ヶ原などの緑豊かな公園エリアは、燈花会の期間中は幻想的な灯りの森へと姿を変えます。

なら燈花会の開催時期は夏真っ盛りであり、日中は猛暑となることが多いため、夕方以降の観光が推奨されます。奈良町エリアには古い町家を改装したカフェや土産物店が立ち並び、燈花会の前に奈良の風情を楽しむことができます。近鉄奈良駅周辺やJR奈良駅周辺には多くの飲食店や宿泊施設があり、夜遅くまでの観光にも対応可能です。ただし、燈花会期間中は混雑が予想されるため、公共交通機関の利用と時間に余裕を持った行動が推奨されています。

関連情報

  1. 花火の有無: なら燈花会では花火の打ち上げは一切ありません。静かな灯りを楽しむことが主旨であり、祭りのような賑やかな催し物や大きな音響はありません。

  2. 「燈花」の意味: 「燈花」とは、灯心の先にできる花の形のかたまりを指します。これができると縁起が良いと言われており、イベント名には訪れた人々が幸せになりますようにとの願いが込められています。

  3. ボランティア参加方法: 会期中のカップ並べ・点灯・後片付けなどを行う「灯人(ひと)サポーター」は、毎年6月よりNPO法人なら燈花会の会の公式サイトを通じて募集されます。一日当たり300人程度が上限で、事前申し込みが必要です。会員になることも可能であり、年間を通じて企画運営に携わることができます。

  4. 他地域への展開: なら燈花会は奈良県内だけでなく、全国への展開も行っています。2009年には横浜開港150年記念博覧会での奈良Day、2012年には明治神宮奉納燈花会、熊本水灯りへの参加など、他地域でも「燈花会」の灯りが広がっています。

  5. メディア露出: 2017年にはキリンビールのCMに採用され、広く認知されるきっかけとなりました。また、MBS「ちちんぷいぷい」でのサポーター体験取材など、テレビや雑誌でも多数取り上げられています。

  6. 最新情報の確認: 開催日程や実施可否は天候や社会状況により変更となる可能性があるため、必ず公式サイト(http://www.toukae.jp/)で最新情報を確認してください。近年は8月上旬の約10日間で開催されており、最新の開催日程は公式サイトで確認できます。


出典・関連リンク

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