概要

三国祭(みくにまつり)は、福井県坂井市三国町で行われる三國神社の春の例大祭です。富山県高岡市の御車山祭、石川県七尾市の青柏祭とともに「北陸三大祭」の一つに数えられ、毎年5月19日の例大祭、20日の山車神輿巡行(中日祭)、21日の後日祭と、三日間にわたって盛大に催されます。中でも20日に旧市街を練り歩く山車巡行は圧巻で、武者人形を乗せた高さ6mを超える巨大な山車が湊町の歴史ある町並みを進む姿は、多くの見物客を魅了します。

三国湊は北前船交易の拠点として栄えた港町であり、三国祭はその繁栄を築いた町衆が山車人形や舟神輿を奉納してきた祭りです。約300年の歴史を持ち、三國神社の神事を中心に据えながら、豪壮な山車が町を巡って三国湊の文化と信仰を今に伝えています。2005年に三国町(現・坂井市)の無形民俗文化財に、翌2006年には福井県の無形民俗文化財に指定され、地域を代表する伝統行事として大切に受け継がれています。

歴史と由来

三国祭の曳山がいつ始まったか正確な日付は明らかではありませんが、享保二年(1717年)の「大門町記録」に傘鉾の記録が見え、この頃には祭礼の原型があったと考えられています。宝暦年間(1750年頃)には傘鉾や担い屋台が登場し、祭りの華やかさが増していきました。三國神社の公式には、祭りの起源を元禄十年(1697年)とする伝えもあり、いずれにせよ江戸時代中期には港町の祭礼として定着していたことがうかがえます。

飾り山車の奉納の始まりとされるのが、宝暦三年(1753年)に木場町と今町の両町組が、三國神社の社地・桜谷の桜にちなんで永代桜を飾った「桜山」を曳き出したことです。続く宝暦七年(1757年)には元新町・下新町の両町組が武蔵野の笠鉾を出し、以後隔年で山車を出すようになりました。こうして各町がそれぞれの趣向を凝らした山車を競うように奉納する流れが生まれていきました。

現在の三国祭を特徴づける武者人形の山車が広まったのは、天保十五年(1844年)のことです。「万代不易録」によると、この年に担ぎ屋台へ人形を飾ったところ大変な人気を博し、翌年から他の屋台もこれを見習うようになったと伝わります。北前船交易で三国湊が隆盛するとともに山車人形も豪華さを増し、最盛期には高さ10mを超えるような巨大な武者人形が出来栄えを競うほどでした。

しかし明治に入って町に電線が敷設されると、巨大な山車はそのまま曳くことができなくなり、現在では高さが制限され、6m前後の山車が巡行しています。坂井市龍翔博物館の別館には、明治末期に用いられた10mを超える人形を載せた山車が展示されており、かつての壮大な姿を今に伝えています。このように三国祭は、港町の経済的繁栄と時代の変化を映しながら、その姿を変えつつ受け継がれてきた祭りなのです。

見どころ

武者人形を乗せた巨大山車の巡行
三国祭最大の見どころは、中日の5月20日に行われる山車巡行です。町内には18基の山車があり、その年に山番にあたった6基(または7基)が旧三国町内を巡行します。武者人形を乗せた高さ6mを超える山車が、狭い湊町の路地を練り歩く迫力は圧巻で、北陸三大祭の名にふさわしい壮観な光景を生み出します。

三國神社前の勢揃いと奉納
中日祭の20日には、当番区の山車が三國神社前に勢揃いして奉納されます。その後、神輿・武者行列をはさんで山車が前後に並び、神社前を出発して区民に曳かれながら旧市街を巡行します。神事と山車巡行が一体となって進む様子は、この祭りが単なる曳山行事ではなく、神への奉納を核とした格式ある神事であることを物語っています。

歴史上の英雄を題材にした山車人形
山車の頂に据えられる人形は、源義経や真田幸村、明智光秀、柴田勝家といった歴史上の武将や、歌舞伎の名場面を題材とすることが多く、区ごとに趣向を凝らして制作されます。人形師の手による精巧な造形は毎年の話題となり、どの区がどの題材を奉納するかも祭りの楽しみの一つとなっています。

宵山車の練り歩き
本番前日にあたる19日の夕刻には、「宵山車(よいやま)」が行われます。夕闇の中を山車が三國神社周辺を練り歩く様子は幻想的で、翌日の本番への期待を高めます。灯りに照らされた武者人形が夜の湊町に浮かび上がる光景は、昼間の巡行とはまた違った風情があります。

子供たちによる囃子方
各区の山車には囃子方の子供たちが乗り込み、太鼓や笛で祭りを盛り上げます。祭りの数ヶ月前から練習を重ねた小学生たちが、元気な掛け声と力強いバチさばきを披露する姿は、祭りを次世代へ受け継ぐ地域の営みそのものです。

由緒ある山車屋台と文化財
山車の土台となる屋台そのものにも見どころがあります。天保年間に制作された最も古い形を伝える屋台や、精緻な彫り物・刺繍を施した水引幕など、坂井市の有形文化財に指定されているものもあり、人形だけでなく屋台の工芸美もじっくり鑑賞したい要素です。

開催情報・アクセス

  • 開催日:毎年5月19日(例大祭)・20日(山車神輿巡行/中日祭)・21日(後日祭)の3日間
  • 神事期間:5月15日の宮開式から21日の後日祭まで一連の神事が執り行われる
  • 場所:三國神社および旧三国町内(福井県坂井市三国町)
  • 主催:三国祭保存振興会
  • 見どころの中心:20日の山車巡行、19日夕方の宵山車
  • アクセス:えちぜん鉄道三国芦原線「三国駅」下車、三國神社最寄りは「三国神社駅」

周辺の見どころ

三国祭を訪れる際は、日本海に面した景勝地「東尋坊」がすぐ近くにあります。荒々しい柱状節理の断崖が約1km続く景観は国の天然記念物・名勝に指定されており、祭りとあわせて三国の自然美を堪能できます。

三国湊は北前船で栄えた港町の面影を色濃く残しており、旧市街には格子戸の町家や商家が点在します。祭りの前後に湊町の街並みを歩けば、山車を生み育てた町衆の文化や、海運で富を築いた三国の歴史を肌で感じることができます。

また、明治末期の10mを超える山車を展示する坂井市龍翔博物館は、三国祭の歴史をより深く知るのに格好の施設です。かつての壮大な山車の姿を目にしてから祭りを見物すれば、現在の山車に込められた伝統の重みをいっそう味わうことができるでしょう。

関連情報

  • 開催月:5月(春)
  • 地域:福井県坂井市三国町
  • 神社:三國神社(旧称・山王宮/三国湊の総鎮守)
  • 起源:江戸時代中期に成立、飾り山車は宝暦3年(1753年)の桜山が初め、武者人形は天保15年(1844年)から広まる
  • 位置づけ:御車山祭・青柏祭とともに北陸三大祭の一つ
  • 文化財:2005年に三国町、2006年に福井県の無形民俗文化財に指定

出典・関連リンク

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