琴弾八幡宮大祭(ことひきはちまんぐうたいさい)は、香川県観音寺市の琴弾八幡宮で毎年10月の第3週末に行われる秋季大祭である。正式名称は「琴弾八幡宮御大祭」で、地元では「観音寺祭り」「観音寺ちょうさ祭り」の通称で広く親しまれている。瀬戸内海を望む琴弾山に鎮座する古社の例祭として、収穫の秋に感謝を捧げるとともに、香川県西部(西讃)に根づいた太鼓台文化の粋を集めた勇壮な祭礼である。

祭りの主役は「ちょうさ」と呼ばれる太鼓台で、琴弾八幡宮には9台が奉納される。この9台は周辺地域の太鼓台に比べてかなりの大型で、俗に「3トン級」と呼ばれるほどの重量を誇り、金糸で刺繍された飾り幕をまとった姿は絢爛豪華そのものである。夜間の派手な電飾でも知られ、担ぎ手たちが息を合わせて太鼓台を高々と差し上げる「かきくらべ」は、観衆の熱気を最高潮に高める祭りのハイライトとなっている。

歴史と由来

琴弾八幡宮は、瀬戸内海を望む景勝の地・琴弾山の山頂に鎮座する古社である。社伝によれば大宝3年(703年)の創建と伝えられ、海の守護神である八幡神(応神天皇)を祀る。琴を弾く主を船とともに山頂まで引き上げて神殿を建て「琴弾八幡宮」として祀ったという神話が社名の由来とされ、この「船を山頂へ引き上げる」故事は、後述する大祭の稚児行列の所作にも受け継がれている。

江戸時代以前、琴弾八幡宮は神仏習合のもとで四国八十八ヶ所霊場の第68番札所であった歴史をもつ。また源義経が源平合戦(屋島の戦い)に際して勝利祈願をした地としても知られ、瀬戸内海の海上交通と武家の信仰を集めてきた由緒ある社である。こうした歴史的背景が、地域を挙げての盛大な秋季大祭を支える土壌となってきた。

大祭の中心をなす太鼓台(ちょうさ)の奉納は、江戸時代からの伝統をもつ。香川県西部の西讃地域は太鼓台文化がとりわけ濃密な土地で、豊浜・観音寺・大野原に大型の太鼓台が集中し、観音寺市内だけでも118台ものちょうさが現存するとされる。10月になると市内各地でちょうさ祭が催され、まちは太鼓の音と熱気に包まれるが、その中心的存在が琴弾八幡宮大祭である。

9台の太鼓台はそれぞれ地域の自治会によって運営・保存されており、壹號中太鼓から九號社家太鼓まで号数と名称が定められている。八號茂木太鼓は平成11年(1999年)より茂木自治会が、九號社家太鼓は平成12年(2000年)より八幡町自治会が所有するなど、比較的新しく加わった太鼓台もあり、江戸期以来の伝統を受け継ぎながら現在も担い手の輪が維持されている。かつて奉納されていた子供太鼓のように休止中のものもあり、祭りは時代とともにその姿を変えながら続いてきた。

見どころ

3トン級の巨大なちょうさ9台 琴弾八幡宮に奉納される9台のちょうさは、周辺地域の太鼓台よりもひときわ大型で、俗に3トン級と称される。金糸の刺繍で彩られた飾り幕をまとった巨体を大勢の担ぎ手が支える姿は、西讃の太鼓台文化の頂点を体現している。

男たちが競う「かきくらべ」 複数のちょうさが一堂に会し、重量のある太鼓台を高々と差し上げて力と技を競い合うのが「かきくらべ」である。担ぎ手たちの息の合った所作と威勢のよい掛け声が響き、観衆の熱気とともに祭り全体が最高潮を迎える瞬間となる。

山頂本殿への宮入り奉納 土・日曜日の午後には、東地区・西地区を運行したちょうさが琴弾八幡宮へと宮入りし、太鼓台を奉納する。三架橋を渡って進む太鼓台の列は観音寺の秋を象徴する光景で、細かい規則に則って運営される奉納の所作にも伝統の重みが宿る。

神話に基づく稚児行列(お供揃い) 琴弾八幡宮の成り立ちにまつわる神話に基づき、地域の子供たちや祭礼関係者が船を山頂の本殿まで引き上げる稚児行列(お供揃い)が行われる。お稚児さん行列と神輿が琴弾山麓の十王堂内を通過する際には、ちょうさのかきくらべが一時中断される慣わしがある。

夜を彩る電飾と花火の競演 琴弾八幡宮大祭は夜間の派手な電飾でも有名で、ライトアップされたちょうさが闇に浮かび上がる。例年、土曜日の夜には花火が打ち上げられ、光り輝く太鼓台と夜空の花火が競演する幻想的な光景が、昼とはまた異なる祭りの魅力を見せる。

七十五膳配膳式と一ツ物放生会 大祭では太鼓台奉納のほかにも多彩な祭礼行事が営まれる。神前に七十五の膳を供える「七十五膳配膳式」や、鳥居前を流れる八幡川(放生川)に鯉を放流する「一ツ物放生会」、里神楽などの奉納行事が行われ、勇壮な太鼓台と静謐な神事が一体となって大祭を形づくっている。

開催情報

  • 開催地:香川県観音寺市
  • 会場:琴弾八幡宮(観音寺市八幡町1-1-1)・十王堂周辺
  • 開催時期:毎年10月の第3日曜日を最終とする金・土・日の3日間(金曜=宵祭り、土日=宮入奉納)
  • 主な行事:ちょうさのかきくらべ・宮入奉納、稚児行列(お供揃い)、神輿渡御、花火(土曜夜)、屋台
  • アクセス:JR予讃線・観音寺駅からタクシー約4分/高松自動車道さぬき豊中ICから車で約12分
  • 観覧:観覧無料(駐車は有明浜グラウンド等の指示に従う)。※情勢により中止・変更となる場合がある

周辺の見どころ

祭りの舞台となる琴弾山を含む一帯は、国の名勝に指定された琴弾公園として整備されている。園内の有明浜には、周囲約345メートルにおよぶ巨大な砂絵「銭形砂絵(寛永通宝)」が描かれており、琴弾山の山頂展望台から見下ろすこの銭形は「見た者は健康で長生きし、お金に不自由しない」と言い伝えられる観音寺屈指の名所である。

観音寺市には太鼓台文化を一年を通じて体感できる「ちょうさ会館」があり、実物のちょうさや祭りの映像を通じて、市内に100台以上現存する太鼓台の世界を学ぶことができる。大祭の時期以外に訪れても、西讃の秋祭りの熱気の一端に触れられる施設である。

琴弾八幡宮の周辺は四国八十八ヶ所霊場の札所が集まる遍路の地でもある。琴弾八幡宮は江戸時代以前に第68番札所であった歴史をもち、現在の第68番神恵院・第69番観音寺は同一境内に並ぶ全国的にも珍しい二霊場として知られ、祭りと巡礼の文化が重なり合う観音寺ならではの風景を楽しめる。

関連情報

  • 開催月:10月(秋)
  • 所在地:香川県観音寺市(四国地方)
  • 起源:太鼓台奉納は江戸時代からの伝統/琴弾八幡宮は社伝で大宝3年(703年)創建と伝わる
  • 規模:3トン級のちょうさ9台を奉納(観音寺市内には計118台のちょうさが現存)
  • 通称:観音寺祭り/観音寺ちょうさ祭り
  • 特色:山頂本殿への宮入り、神話に由来する稚児行列、夜間電飾と花火の競演

出典・関連リンク

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