概要

神田祭(かんだまつり)は、東京都千代田区外神田に鎮座する神田神社(通称・神田明神)の例祭であり、京都の祇園祭、大阪の天神祭と並んで日本三大祭の一つに数えられることもある、江戸を代表する祭礼である。徳川将軍家が江戸城内に神輿や山車を迎え入れて上覧したことから「天下祭」と称され、江戸っ子の心意気を今に伝える祭りとして知られる。

例大祭の神事は毎年五月中旬に営まれるが、神輿渡御などを伴う盛大な神幸祭(本祭)は、同じ江戸の大祭である山王祭と一年交代の隔年で斎行される。氏子の区域は神田・日本橋(日本橋川以北)・秋葉原・大手町・丸の内・旧神田市場など、東京の中心部に広がる百ヶ町を超える広大なもので、本祭の年には数百基ともいわれる町神輿が都心を練り歩く。

歴史と由来

神田神社(神田明神)は、社伝によれば天平二年(七三〇年)の創建と伝えられ、約千三百年の歴史を持つ江戸総鎮守である。祭神には大己貴命(だいこくさま)、少彦名命(えびすさま)、そして平将門命が祀られている。平将門は、関東に独立勢力を築いて朝廷に反旗を翻した平安中期の武将であり、その霊を鎮め祀る神社として、江戸の人々から篤い信仰を集めてきた。

江戸時代、徳川幕府は神田明神を江戸城の鬼門(北東)を守護する神社として手厚く庇護した。神田祭は、徳川家康が関ヶ原の合戦に臨む際に戦勝を祈願し、勝利を収めたことにちなんで、幕府公認の祭礼として隆盛を極めたと伝えられる。江戸城内に祭礼の行列を迎え入れて将軍が上覧する「天下祭」の格式は、江戸の数ある祭りの中でも特別なものであった。

祭りの花形はかつて壮麗な山車の行列であった。明治に入っても祭礼は盛んで、明治十七年には四十六本、明治二十年には四十本もの山車が曳き出され、江戸時代と変わらぬ賑わいを見せた時期もあった。しかし明治後期以降、市街地に電線が張りめぐらされて背の高い山車の巡行が困難になったことなどから、祭りの主役は次第に山車から神輿渡御へと移っていった。今日では氏子各町の神輿が中心となり、勇壮な担ぎ手の掛け声とともに都心を巡行する姿が祭りの象徴となっている。

神田祭が江戸の人々にこれほど愛されてきた背景には、祭神の一柱である平将門への独特の信仰がある。将門は、関東の人々にとっては中央権力に立ち向かった英雄として敬愛され、その荒ぶる御霊を手厚く祀ることで土地を守護してもらうという信仰が江戸に根づいた。大手町には今も将門の首を祀ると伝わる将門塚があり、神田明神とともに将門信仰の中心となってきた。こうした反骨と守護の二面を併せ持つ祭神への思いが、権力に媚びない江戸っ子気質と結びつき、天下祭でありながら庶民の祭りとしての熱気を帯びる、神田祭独特の性格を形づくっている。

見どころ

神幸祭

本祭の中心となるのが神幸祭である。鳳輦(ほうれん)や神輿に神霊を移し、平安装束をまとった大行列が神田・日本橋・大手町・丸の内など氏子百ヶ町を一日がかりで巡行する。総延長数百メートルにも及ぶ行列が、近代的なビル街と江戸情緒の交錯する東京の中心部を進む光景は、神田祭ならではの壮観である。

神輿宮入

神幸祭の翌日には、氏子各町が担ぐ町神輿が次々と神田明神へと参拝する神輿宮入が行われる。数百基にも及ぶ神輿が一日を通じて境内へと向かい、担ぎ手たちの威勢のよい掛け声と熱気が境内を包む。江戸前の粋な神輿の担ぎ方と、それを見守る大勢の参拝者で、祭りは最高潮を迎える。

附け祭

神幸祭の行列に続く「附け祭(つけまつり)」も見どころの一つである。これは時代ごとの世相や流行を採り入れた趣向を凝らした演し物の行列で、巨大な作り物の山車や仮装の練り歩きなどが供奉する。江戸庶民の遊び心を受け継ぐこの賑やかな趣向は、神事の荘厳さとは対照的な祭りの華やぎを添えている。

開催情報・アクセス

神田祭は、例大祭の神事を毎年五月中旬に行い、神幸祭・神輿宮入を伴う本祭は山王祭と隔年で斎行される(おおむね西暦の奇数年が神田祭の本祭年)。祭礼は五月十五日に近い土日を中心とした数日間にわたって展開される。

会場の中心となる神田神社は、JR中央線・総武線の御茶ノ水駅から徒歩約五分、東京メトロ丸ノ内線の御茶ノ水駅や千代田線の新御茶ノ水駅、銀座線の末広町駅などからも徒歩圏にある。氏子区域が都心一帯に広がるため、神輿渡御や宮入は秋葉原・日本橋・大手町など広範囲で繰り広げられる。本祭の年は大変な人出となるため、公共交通機関の利用が勧められる。

周辺の見どころ

神田神社の門前は、世界有数の電気街・サブカルチャーの街である秋葉原に近く、伝統の祭礼と現代の都市文化が隣り合う独特の立地にある。神社のほど近くには湯島聖堂(孔子廟)があり、ニコライ堂や神保町の古書店街、湯島天神なども徒歩や電車で巡ることができる。

氏子区域である日本橋・大手町・丸の内は、江戸以来の商業の中心であると同時に現代日本の経済の中枢でもあり、老舗と高層ビルが共存する街並みを楽しめる。祭りの時期にあわせて訪れれば、江戸総鎮守の祭礼と、その氏子町が育んできた東京の中心市街地の双方を体感できる。

関連情報

神田祭は、山王祭・深川祭(富岡八幡宮の例祭)とともに江戸三大祭の一つに数えられ、また京都祇園祭・大阪天神祭と並べて日本三大祭と称されることもある。とりわけ山王祭とは、徳川幕府公認の「天下祭」の双璧として、一年交代で本祭を斎行する深い関係にある。

  • 開催月: 五月中旬(本祭は山王祭と隔年)
  • 都道府県: 東京都(関東)
  • 鎮座地: 千代田区外神田 神田神社(神田明神)
  • 祭神: 大己貴命・少彦名命・平将門命
  • 創建: 社伝に天平二年(七三〇年)・約一三〇〇年の歴史
  • 格式: 江戸総鎮守・徳川幕府公認の「天下祭」・江戸三大祭

出典・関連リンク

東京都の他の祭り

春の祭り

← 他の祭りを探す