秩父川瀬祭(ちちぶかわせまつり)は、埼玉県秩父市番場町の秩父神社で毎年7月19日・20日に行われる夏の例大祭である。秩父では「お祇園」とも呼ばれ、笠鉾4基・屋台4基の計8基の山車が秩父屋台囃子を響かせながら街なかを曳き廻される。冬に行われる日本三大曳山祭の一つ「秩父夜祭」と対をなす祭りとされ、夜祭に対しては昼の祭り、冬に対しては夏、大人の祭りに対しては子どもの祭りと位置づけられている。笠鉾・屋台の囃子手や、花笠を付けた拍子木を子どもたちが務める姿が見られる、子どもが主役の祭りである。

祭りの最大の見どころは、20日の大祭で重量約400キログラムもの白木造りの神社神輿が荒川の清流の中へと担ぎ込まれる「神輿洗いの儀式」である。斎場前の荒川で34人の氏子に担がれた大御輿がもみ込まれる様子は、あらゆる災厄を流し去るとされ、祭りは最高潮を迎える。清らかな水の霊力によって罪や穢れを祓うという古くからの禊信仰を今に伝える、夏らしい神事である。

歴史と由来

秩父川瀬祭は「お祇園」「祇園祭」「天王様」などとも呼ばれ、平安時代に京都の八坂神社で始められた祇園祭、すなわち祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)の流れを汲むものと考えられている。祇園御霊会は疫病や災厄をもたらす悪神を鎮め、暑い夏を無事に過ごせるよう祈願する信仰から生まれた祭りで、平安時代以降に全国へと広まった。

祭神の須佐之男命(すさのおのみこと)は、神仏習合の時代には仏教で疫病を司るとされた牛頭天王と同一視され、「天王様」とも呼ばれてきた。蘇民将来の伝説とも結びつき、悪疫除けのご利益で広く知られている。全国各地の夏祭りの多くは、この須佐之男命を祀って行われており、秩父川瀬祭もその一つに数えられる。

荒川に神輿を担ぎ込むのは、清らかな水の霊力によって人々の罪や穢れを洗い流そうとする禊やお祓いの信仰によるものである。秩父では、各町会が山車を持たなかった時代でも、行列が川に出向いて胡瓜やお供物を川に流し、無病息災を祈願したことが文献に記されている。神輿を川に舁ぎ込むことは、神様自身が禊をされるという意味を持つと考えられている。

また、かつて秩父の町内では「祇園柱」「天王柱」と呼ばれる柱松を立て、そこに須佐之男命を迎えて悪疫の退散を願う儀式が江戸時代末から明治初年ごろまで行われていた。これは病気や災いをもたらす悪神の町内への侵入を防ぐための儀式で、現在の宵宮で行われる「天王柱立て神事」にその信仰が受け継がれている。

母体である秩父神社は2000余年の歴史をもつ秩父地方の総鎮守で、宝登山神社・三峯神社と並ぶ秩父三社の一つである。冬の例大祭「秩父夜祭」は京都祇園祭・飛騨高山祭とともに日本三大曳山祭に数えられ、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている。夏の川瀬祭と冬の夜祭は、同じ秩父神社の一年を彩る二大祭礼として、対をなす存在として親しまれてきた。

見どころ

神輿洗いの儀式 20日の大祭で行われる神輿洗いの儀式が、この祭り最大のクライマックスである。重量約400キログラムの白木造りの神社神輿が、斎場前の荒川の清流の中へと担ぎ込まれ、34人の氏子によってもみ込まれる。あらゆる災厄を流し去るとされる勇壮な神事である。

8基の笠鉾・屋台の曳き廻し 笠鉾4基・屋台4基の計8基の山車が、秩父屋台囃子を響かせながら街なかを曳き廻される。絢爛豪華な山車が夏の秩父の街を彩る様子は圧巻である。

子どもが主役の祭り 笠鉾・屋台の囃子手や、花笠を付けた拍子木を子どもたちが務めるのが、この祭りの大きな特徴である。冬の秩父夜祭が大人の祭りであるのに対し、川瀬祭は子どもが中心となる祭りとして親しまれている。

天王柱立て神事 19日の宵宮の夕方、各笠鉾・屋台が秩父神社に集結し、境内の日御碕宮(ひのみさきぐう)に祀られる須佐之男命を迎える「天王柱立て神事」が行われる。境内に浮かび上がる提灯やぼんぼりの灯りが幻想的である。

山車のすれ違いと曳き別れ 20日の夜には、大通りを中心に山車の曳行が行われ、狭い道での「すれ違い」や、祭りの終わりを告げる「曳き別れ」が見どころとなる。屋台囃子とともに繰り広げられる勇壮な場面である。

お水取り行事 川瀬祭の前夜には、荒川武の鼻の妙見淵周辺で「お水取り行事」が行われる。選ばれた若者が荒川の水を汲んで持ち帰り、町内の入口や辻に撒くもので、清らかな水の霊力で町内を災いから守る清めの儀式である。

開催情報

  • 正式名称: 秩父川瀬祭(別名「お祇園」「祇園祭」)
  • 開催日: 毎年7月19日(宵宮)・20日(大祭)
  • 会場: 秩父神社(埼玉県秩父市番場町)および秩父市街地・荒川斎場周辺
  • 山車: 笠鉾4基・屋台4基の計8基
  • 主な神事: 天王柱立て神事(19日宵宮)、神輿洗いの儀式(20日大祭)、お水取り行事(前夜)
  • アクセス: 秩父鉄道秩父駅、または西武秩父線西武秩父駅から徒歩

周辺情報

秩父神社は2000余年の歴史をもつ秩父地方の総鎮守で、宝登山神社・三峯神社と並ぶ秩父三社の一つである。天正期に徳川家康が再建した社殿には数多くの精緻な彫刻が施され、それぞれに「いわれ」が伝えられている。荘厳な社殿そのものが見どころとなっている。

秩父神社の冬の例大祭「秩父夜祭」は、京都祇園祭・飛騨高山祭とともに日本三大曳山祭の一つに数えられ、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている。夏の川瀬祭とあわせて、秩父神社の一年を彩る二大祭礼として知られている。

秩父地方は荒川の清流と山々に囲まれた自然豊かな土地で、長瀞のライン下りや羊山公園の芝桜など、四季折々の見どころがある。祭りとあわせて秩父の自然や食を楽しむこともできる。

関連情報

  • 秩父神社: 2000余年の歴史をもつ秩父三社の一つで、川瀬祭の母体となる神社である。
  • 秩父夜祭: 同じ秩父神社の冬の例大祭で、川瀬祭と対をなす日本三大曳山祭の一つである。
  • 須佐之男命: 境内の日御碕宮に祀られる祭神で、牛頭天王と同一視され悪疫除けの信仰を集める。
  • 祇園御霊会: 平安時代に京都八坂神社で始まった祭りで、川瀬祭の由緒の源流とされる。
  • 神輿洗い: 荒川の清流に神輿を担ぎ込み、災厄を流し去る川瀬祭最大のクライマックスである。
  • 秩父三社: 秩父神社・宝登山神社・三峯神社を指し、秩父を代表する三つの古社である。

出典・関連リンク

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